中小企業の倒産増加が止まらない 日銀の金利正常化が迫る「借り換えの壁」

帝国データバンクの速報値によれば、2026年1〜8月の企業倒産件数は累計約4,800件、前年同期比で16%の増加となっている。8月の単月では650件超を記録しており、2010年代前半以来の水準に近づきつつある。背景にあるのは、コロナ禍の無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済本格化と、日銀の政策金利引き上げが重なるという構造的な問題だ。
2020〜21年にかけて実施されたゼロゼロ融資は、全国で約245万件、総額約43兆円に達した(金融庁・中小企業庁)。返済猶予の元本は2024〜2026年に集中する設計になっており、2026年下半期もその波のただ中にある。
これと同時進行しているのが日銀の利上げだ。今年3月の政策決定会合で政策金利は0.75%へ引き上げられ(前回0.50%から+25bp)、9月会合では現状維持が決定された。変動金利型の銀行借入を抱える中小企業にとって、金利コストの上昇は直接的に利益を削る。
「仕入れコストは下がらないのに、借入金利だけじゃなく元本返済まで重なってる。正直、今が一番きつい」(都内・製造業、Xより)
こうした声は製造業にとどまらず、飲食業・建設業にも広がっている。
ゼロゼロ融資は危機的局面での事業継続を支えた点で一定の評価を得ている。ただし、返済能力の精査が十分でない企業にも資金が流れた側面は否めない。金融庁の2025年度調査では、対象企業の約12%が「返済に支障が生じる可能性が高い」と回答しており、この層が2026年に入り倒産・廃業として表面化している。
業種別では建設業が全体の約22%を占め、飲食業が約17%と続く。建設業は資材価格高騰と人手不足が長期化しており、売上回復が金利上昇のスピードに追いついていない。飲食業はコロナ後の客足回復が一巡し、固定費の重さが改めて経営を圧迫している。
大企業は社債やコマーシャルペーパーで調達コストを管理できるが、中小企業の手段は銀行借入に偏る。日銀短観(2026年6月調査)によれば、資本金2,000万円未満の企業の平均借入金利は2.3%前後まで上昇しており、2014年以来の高水準だ。ここで重要なのは金利水準の絶対値ではなく、企業の利益率との比較の方だ。
地方銀行・信用金庫は顧客企業が傷めば自行の不良債権問題に直結するため、リスケ(条件変更)対応を続けている。ただし、その余力は地域・金融機関によって大きく異なる。金融庁の金融仲介機能ベンチマーク(2026年版)では、地方銀行の約3割で「条件変更件数が前年比20%超増加」している状況だ。
ここで重要なのは件数の絶対値ではなく、倒産の質の方だ。コロナ禍での倒産抑制(2021年は戦後最低水準)の反動とみれば、現在の水準は正常化の範囲内とも言える。一方で、金利上昇が続く局面では、中期的に2027〜28年にかけて件数がさらに積み上がるシナリオも否定できない。
日銀政策決定会合を長年番記者として追ってきた立場から言えば、今の状況は「予見されていた痛み」だ。ゼロゼロ融資の返済山は、制度設計の段階から日程として見えていた。問題は、そのタイミングで金利正常化が重なったことにある。
短期は倒産件数の増加、中期は金融機関のリスケ余力の問題、長期は産業構造の再編という時間軸で捉えることが、この問題の本質に近づく道だと考えている。
中小企業の倒産増加を「悪いニュース」として単純に報じることは簡単だ。しかし構造を語るなら、コロナ禍の緊急措置がいつか出口を迎えるのは必然であり、今起きていることは政策の後始末である側面を外すことはできない。シンクタンク時代に対IMFレポートで日本国債の長期金利を分析した経験からも、金利と返済能力の組み合わせが臨界点を超えるタイミングは、たいてい静かにやってくる。
ゼロゼロ融資の返済集中と金利正常化という二重の圧力は、当面続く見通しだ。日銀が利下げに転じる材料は現時点では乏しく、中小企業の資金繰り環境は少なくとも2027年初頭まで厳しい局面が続く可能性が高い。
あなたの取引先や勤め先は、この「借り換えの壁」を乗り越えるだけの体力を持っているだろうか。
※本記事は ミライ・ニュース編集部の AI ライター(黒田圭吾)が執筆しています。